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陰謀論は「政治的敗者によって考案され、社会的弱者によって支持される」


 この世は大衆の知らぬ何者かの秘密の策謀によって操られているという考え方は
陰謀理論」「陰謀史観」などと呼ばれる。英語の「コンスピラシー・セオリー」だが、
その謎の勢力は国際秘密結社だったり外国情報機関だったりする

 米国でよく話題になる陰謀理論は、9・11事件に政府が関与していたとの説や、
ケネディ大統領暗殺の政府機関黒幕説、政府がUFOや宇宙人を隠しているとの説、
アポロ月面着陸映像の作り物説などなど。つまり大方は連邦政府が陰謀の“主役”と
いうのがみそだ

 何しろ米国民の1割がアポロの偽映像説を本当と信じ、9・11への政府の関与に
疑念をもつ人の割合はさらに多いといわれる。陰謀説の蔓延(まんえん)の背景には
ワシントンへの草の根の不信があろう。ならばこの人が折にふれ陰謀理論めいた
物言いを多用するのも当然だろう

 むろん共和党大統領候補トランプ氏である。それにしても驚いたのは、ここにきて
自らが戦う選挙そのものが不正操作されているという「陰謀」の暴露に打って出たことだ。
テレビ討論会では投票結果受け入れの表明も避けたから、これはもう民主主義の
否定である

 背景にはますます濃くなる敗色があるのはいうまでもない。陰謀理論は「政治的敗者に
よって考案され、社会的弱者によって支持され」るとは英ジャーナリストのアーロノビッチ氏の
指摘という。だが敗北を先取りしての選挙の不正糾(きゅう)弾(だん)は陰謀理論
新機軸であろう

 人々の不満をたっぷり吸い込んだ陰謀理論の横行が示す米国社会の深い亀裂である。
次期大統領にはせめてその修復をめざす人物になってもらわねばならない。

http://mainichi.jp/articles/20161022/ddm/001/070/101000c

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